G<僕は大満足で向こうの世界へ帰ったんだよ>

原「水に関係することで亡くなった人はいますか?」

受け手「お風呂で、溺れたというか、癲癇(てんかん)を持っていて。。。」

原「ああ、それで。水、水って伝わってくるので。お風呂なのね。息子さん?今、10代後半くらいに見えるんだけど。」

受け手「いえ、31歳。」

原「でも今の姿は17、8くらいで見えますよ。若く見えますね。細身でしょ?細身のお兄ちゃんで、青年っていう感じですよ。
  30よりはもっと若く見えます。真面目な、律儀な人っていう感じです。」

受「堅物で」

原「そう、真面目な、きっちりした人。血液型で言ったら、A型みたいな。お母さんもこの子と二人三脚でやってきたと、(息子さんが)言っているんだけど。
  それで本当にお母さんにお世話になりました、(頭を下げるポーズ)って律儀なの、すごく。ゆるくでてこないの。律儀にお世話になりましたって、
  そういう感じなの。(会場笑)本当に二人三脚で大変お世話になりましたって。
  お母さんは母親として非の打ち所がなかったって、言っています。(会場沸く)」

受「小学校6年の時に病気になって、後遺症で癲癇(てんかん)と障害っていうか。
  でも知的障害と言われても、こうやって新しい皆さんに会っても会話もできます、一人で映画も行きます、本屋さんも行きます、障害的にはすごく。。
  でも、癲癇(てんかん)がひどくて、お風呂が一番怖かったんです。他のところは、自転車に乗っていて、転んで、そこで交通事故にあって亡くなっても、
  そこまで覚悟はできていたんです。お風呂だけは私がそばにいて、どうしてその時に。。。」

原「この日も、お母さんいましたものね。」

受「いました。」

原「いて、気がつくのがちょっと遅かったのね。でもほんのちょっとよね。」

受「30秒とか1分とか。。。」

原「ほんのちょっと遅かったって言っています。」

受「本当に。。。」

原「でも、お母さんもずっと気にしてたって言っています。その日お母さん、台所にいたんじゃないですか?」

受「そうです。すぐそばです。」

原「本当に一瞬。でも、息子さんはこの時で良かったんだって、言っています。この時で良かったんだって言っているの。
  だから、その一瞬だって、お母さんはこの子がお風呂に入っている時いつも気にしていたじゃないですか。本当に一瞬だけ気がそれた。
  その時だったって。本当にちょっと何かを見ていたとか。台所でちょっと火を見ちゃったとか。」

受「そうです。」

原「でも、これが、神の計らいだって言っているの。彼にとっては、この時が良かったんだって言っているの。」

受「去年、お風呂をリフォームして、わざわざテレビをつけたんです。お風呂に入っていて、
  あの子がテレビを見て笑っていれば、『あ、癲癇起こしていない。大丈夫だな』ってなって、その本当に30秒前まで笑ってた声がしたんで、
  『ああ、大丈夫だな』と思って、それから、ほんの30秒か1分くらいの間すごく静かで、はっと思った時にはもう浮いていたんです。
  きっと笑った後に(発作を)起こしたんだと思うんです。」

原「そうですね。だけどね、この時で良かったんだって言っているんです。この時が帰る時だったんだって。それをはっきり言っているんですよ。
彼としても、もうこれ以上お母さんに世話をかけたくないっていうのが一つあったの。
律儀な子だからね、もうお母さんに世話かけることが、すごく彼は申し訳ないっていう気持ちが彼はあったって言うの。
どうしても、それで良かったんだって言ってきているんですよ。それでもうお母さんは、僕にできること全部やってくれたって言っていますよ。僕にお金相当使ったって言っているんだけど。お風呂のリフォームもそうだけど、他にもいろんなことで、ありとあらゆることをしてくれたって。」

受「。。。そんなことないのに。。。」

原「この子音楽が好きだったと思うんだけど、だからこの子が良い音楽を聴こえるようにっていうような感じで、
良い音楽環境をテレビ以外にも整えてくれたみたいなんだけど。そういう風にして僕はいつもすごく幸せだった。いつも美味しいもの食べて、温かい物食べて、
良い音楽聴いて、愛されて、本当に大事にしてもらったって、言っていますよ。もう、本当に大事にしてもらって、この世に生まれてきたのは、
お母さんに会う為に生まれてきたんだって。
それで31年間、本当にお母さんの愛情を僕は独り占めしたって、言っていますよ。」

受「長男には申し訳なかったんですけど、(長男は)もう、大学院を卒業して、こっちに帰ってきたんですけど、薬剤師になって、もう独立してくれて、
私はこの下の子の、亡くなった子のために。。。悪いけど家から出ていってって。。。まあ、本人も、独立することを長男はわかっていたので、
長男は中学の時から、下の子が病気になったときからずっと(私が)弟にかかりっきりで、本当に申し訳ないけど、
本当に自分で全部できるような長男だったので。。。」

原「そうね、(ご長男は)しっかりしているものね。」

受「それでもうずっと、薬剤師にもなってくれたんで、申し訳ないけど、そういう風にしてずっと弟の面倒を。。。病気になってから、ずっと20年間。。。」

原「本当に独占してお母さんの愛情を全部もらったって言っていますよ。全部もらって、本当に幸せだったって。それこそお兄ちゃんから見たら、
お兄ちゃんが一生分かけてももらえない愛情はこの子は全部もらっちゃっているの。」

受「亡くなってから長男に言いましたら、じゃあもう僕が(弟が)いなくなったから、帰ってこようかと思ったけど、
お母さんと弟の関係は僕との親子関係とはまた違うからって。悪い意味じゃないけど、僕が帰ってきても弟の役目はできないだろうって。」

原「これはご長男はご長男で本当にがんばってお母さんに甘えないようにしてきているから。ご存知だとは思うけれども。
だから、(息子さんから)言ってくるのは、一回ちゃんとご長男には、僕からも謝ってくれって言っているんですよ。お母さんの愛情を僕が独占しちゃったって、
僕は知っているから、それ謝ってくれって言うんですよ。それを伝えってって。お兄ちゃんはお兄ちゃんで、この弟に対して、
意地悪とかなんにもしたことがないんですよ。もう、いっつも。普通だったらひがむじゃないですか、それを全くひがまない。
2歳くらいでしょ、(兄弟の)年離れているの。」

受「そうです。」

原「ね、なのに、本当はお兄ちゃんだって愛情が欲しいのに、普通だったらひがんでちょっと弟にいじめてもおかしくないのに、絶対にいじめてないの、全く。」

受「そうなんです。私から言うのもなんですが、できた息子なんです。」

原「だから、本当にそれはね、僕からも謝ってくれって言っていますよ。でも、僕は本当に満足、大満足で向こうの世界に帰ったって。
しかも、最後の最後まで苦しまなかったって。す〜って逝っちゃった。全く、苦しんでいないって。お母さんの愛情を独り占めして、
大事に大事にしてもらって、それで、もう大満足で向こうの世界に帰ったんだって。
あの時、あのタイミングがもう本当に自分が決めてきたタイミングって。
あと、黄色いお花を見せるのね。菊っぽいような、ガーベラみたいな、お花なんだけど、そのお花を僕の合図だって言っていますよ。
日常生活とかで、黄色い花びらがついてるようなお花をお母さんがふと目にした時、道を歩いている時とか、
その時、僕がいるよって言う合図だって言っています。」

受「嬉しいです。」

原「それだからねって。あと、この子に元気になるようにとか、守ってもらえるようにとか、お守りをあげていないかな、持たせてないかな。」

受「つけてました。一人でどんどん外に出かけるんで、その度に私が癲癇(てんかん)を起こしてはと、心配だったので、毎回お守りをつけて。。。」

原「ね、つけてましたね。鈴もついていませんか?」

受「はい、ついてます。」

原「それをお母さん今持っていませんか?(お母さんうなずく)それを自分の代わりだよって言っているし、あと鈴の音が聞こえたら、
それ僕がいるってことだよって。僕からの合図だよって。だから、寂しくないんだからねって言っています。
そうやって、一生懸命、彼は彼で合図を送ろうって(あちらの世界から)やってるからねって。
それを気に留めて置いてって。
本当に大満足って言っています。だからそんなにもう気にしないでって、
自分を責めるのなんて、もうあれ以上何ができたって言うんだって言っているんです。
もうこれ以上できるものがないくらい全部やったって、言っていますよ。
あれ以上何ができるって言うのって、言っているの。
だから自分を責めそうになったら、あれ以上何ができたかなって(思って欲しい)。
それこそ一緒にお風呂に入るなんてできなかったんだからって。
僕も恥ずかしいから嫌だって。」

受「最初は覗いたり、ドアを開けてお風呂に入らせたりしてたんですけど、さすがに二十歳過ぎたら嫌だって。。。」

原「そう、僕も嫌だって。」

受「心配で、お風呂だけは怖かったんで。」

原「大丈夫だからって。では、写真を。」

(皆さんで写真を回覧)

受「亡くなる一週間前にたまたま携帯を新しくして、それで嫌がるのを無理やり。。。」

原「このお兄ちゃんも髪の毛増やしてます。若い子は髪が長い方が好きなんですね。」

(会場笑)

受「ありがとうございました。」